シンポジウム企画

教育史学会第62回大会では、以下のテーマでシンポジウムを行います。

日時:9月29日(土)14:10~17:40
場所:一橋大学 国立西キャンパス 本館31番教室


テーマ:「教育史とはどのような学問か―「60周年記念出版」の検討を踏まえて」

〔提案者〕「60周年記念出版」の制作者の立場から
     日本教育史領域 米田俊彦(お茶の水女子大学)
     西洋教育史領域 宮本健市郞(関西学院大学)
     東洋教育史領域 新保敦子(早稲田大学)

〔指定討論者〕比較教育社会史の視点から  岩下誠(青山学院大学)
       教育の社会史の視点から   前田晶子(鹿児島大学)
       教職教養との関連の視点から 白石崇人(広島文教女子大学)

〔司会〕木村元(一橋大学)
    山名淳(東京大学)

趣旨
 教育史学会は60周年記念出版(『教育史の最前線Ⅱ』)を2018年5月に行った。
 これを検討の対象として、教育史とはどのような学問としてあるかを考えたい。
 そもそも学会の記念出版にはさまざまな形態がありえようが、これまでの研究を振り返り今後の課題や展望を見いだすという点においては共通している。こうした性格を踏まえて記念出版を捉え、そこに示される学問としての教育史の自己意識や課題認識などを検討の俎上に載せる。
 本シンポジウムのタイトルである「教育史とはどのような学問か」と同様な趣旨の議論はこれまでも企画されてきた。にもかかわらずなぜあらためてこうした問いを構えるかは、教育史を取り巻く状況の変化があるからである。こんにちの大状況において、文教行政から人文・社会科学不要論が唱えられ、これまでにない危機感が当該諸学問のなかに存在する。そのなかで、教育史は、長らく教育学研究の中心に基礎科目として教育哲学とならんで存在したが、教育現場に根ざす実践至上的な要請を背景にして、その足場が揺らいでいる。教職教育のなかでの基礎科目としての教育史の位置の低下と共に進んだ、教育史研究のポスト減にともなう研究者の量的な減少という現実はそのことを示している。さらに、教育学研究のなかの教育史の位置づけの低下は、10年単位で刊行されてきた岩波教育学講座の内容編成の変遷からもうかがわれるように、教育学研究のなかでの相対的な存在感の希薄さにあらわれている。他方、歴史学研究の中においても教育史研究が位置づいていないという指摘もなされてきた(橋本伸也「歴史の中の教育と社会」『歴史学研究』No.830)。
 人文・社会科学の存在が問われる現状を背景に、他方、教職科目という制度の学としての防波堤が揺らぐなかで、改めてそのあり方や中身に向かい合う必要が生まれているといえる。教育史学は何を示す学問なのか、学問としての意味は何か。そうした学問としての土台が問われている点にこんにちの課題がある。
 本シンポジウムでは、改めて教育学の中での教育史の役割に着目しながら、教育史研究のあり方や可能性を考えたい。そのために、最新の研究動向の整理として60周年記念出版を捉え、そこに現れた教育史研究の方向性をみすえながら、これに中心的に携わった会員とこれから学会を担っていく世代との討論を軸にシンポジウムのコアを構成した。
 指定討論者として、今後の教育史のありかたをめぐる議論の活性化に繋げるために、教育史学会の中では周辺にある比較教育社会史の視点、教育の社会史的な視点に加え、教職教養という制度の学と教育史の関係をどう考えるのかという視点を位置づけた。60周年記念出版のなかで教育史がどのように構成され認識されているか、さらに取り上げられている対象がどのように評価され位置づけられているかなどの議論を踏まえながら、教育史研究の学問としての意義と課題を考える機会としたい。